「ドゴゥンドゴゥン」
厚さ20cmのガラス越しに、低く鈍く暗く深い音が響く。 遠くから嬌声が聞こえる。 イルカショーが始まったみたいだ。 今、僕は水族館にいる。 地下一階の大きな水槽の前にいる。 平日の為か、周りには人気はない。 「ドゴゥンドゴゥン」 静まり返ったフロアーに、低く鈍く暗く深い音が響く。 小さな家ほどの水槽の前。 その巨大な水槽に一匹のスナメリが入っている。 泳ぎ、水面に顔を出し、一息ついてまた潜る。 潜ったスナメリは僕の目の前で、頭をガラスに目一杯叩きつける。 硬いガラスに頭を叩きつけて、低く鈍く暗く深い音が響く。 視線が交差する。 何も分っていないような、全てを知っているような、虚ろな目。 また浮き上がり、一息ついてまた潜る。 「ドゴゥンドゴゥン」 輪廻のように延々と延々と、低く鈍く暗く深い音が響く。 その音は、水を震わせ、ガラスの粒子を震わせ、鼓膜を震わせ、僕の心を震わせる。 遠くでまた嬌声が響いた。
by bakabong3
| 2004-05-01 21:07
| お茶は養生の千薬
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