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第三話

村を出ると岩肌に囲まれた場所についた。
しっとりと湿った空気が流れ、岩肌には苔が生している。

大きめな布張りのテントがひとつ。
奥にはベットとストーブがある

テントの奥には小さな池があって魚が泳いでいる。
水面に木漏れ日がゆらゆらと浮かんでいる。

岩肌の切れ間から外の光が漏れているのが見えた。
そこから外の世界に出れるようだ。

人一人がぎりぎり通れるひんやりとした道を抜けると、
限りなく広い真っ青な空がそこにあった。

深い緑の谷底。
それが僕らの村の外だった。
眼下にはたゆまぬ川が流れ、見渡す限り草原が続いている。
遠くに大きな動くものが見える。
村長が言っていたアプトノスという草食モンスターだ。

のろのろと草を食べながら歩く。
こちらに気づいても何喰わぬ顔だ。
僕の家ほどもあろう灰色の体。
顔にある角。
棘のある尾。

近づいて見て少し恐くなった。
この巨大な動物を、僕はこれからこのナイフで殺して肉を剥ぎ取らなければならない。
目があった。
僕は反射的にアプトノスの喉を斬りつけた。

もう何度斬りつけただろう。
体は返り血で真っ赤にそまっている。
でもまだアプトノスは苦しみの声をあげながら生きている。
時には尾を振り回し、生存への必死の抵抗を続ける。
「頼む!頼む!早く死んでくれ!」
恍惚感に近い興奮に身を包まれながら、僕はその体を斬りつけ続けた。

突如、何の前触れも無くアプトノスは崩れ落ちた。
断末魔の声も無く、その場に崩れ落ちた。

そこにはただ肉塊があった。

少し離れた所で他のアプトノスが僕を見てた。
by bakabong3 | 2004-04-22 20:24 | 特産キノコはいかが?


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